P.アンディヌムは新大陸で唯一のビカクシダです.学名の "andinum" が示すように南米のアンデスに産しますが,その広大な地域のなかでもペルー,ボリビアのごく限られた地域にしか自生が確認されていません.その地域はアンデス山脈のすぐ東側,アマゾン河の源流付近の地域.ペルー,ボリビアといえどもアマゾン平野部ともなると年間を通して気温が高く降雨にもめぐまれるため熱帯雨林が広く分布しますが,標高400mほどのアンデス山脈にさしかかる斜面部のような地域では降雨量は比較的少なく,乾燥した森林が広がります.本種はそのような乾燥した森林に分布しています.ここには
Cereus peruviensis や Opuntia などのサボテンが一緒に自生していることも報告されています.
草姿は縦に長く Platycerium willinckii に似てとてもスレンダーな感じがします.ただしウィリンキーと比較すると,貯水葉,胞子葉の裂片の幅は広く,2〜3分岐程度と少なめで規則的な切れ込みが独特です.また葉の表面には,触ると「ふかっ」とした感じがするぐらい大量の星状毛が密生していて,ちょっと離れて見るとほんとうに“プリンスメロンの皮”のような色に見えます.葉の裏面は表面に比べてさらに星状毛の密度が高いためにほぼ真っ白です.アンディヌムは胞子嚢群のつく場所にも特徴があり,胞子葉の先端部裏側ではなく胞子葉の2回目以降の分岐点周辺の裏側につきます(なので付け根から先端へたどっていくと所々に胞子嚢群があることになります).
わりと大型になるビカクシダで,成体では貯水葉の先端から胞子葉の先端まで全長が3mほどになります.また本種は胞子繁殖のほかに根の先端に不定芽を作り子株を出すことでも繁殖もするために,年数を重ねた群生株は着生床をリング状に取り囲むような姿になります.ときにそのサイズは天上の高さ5メートルの6畳部屋がいっぱいになってしまうくらいに...
現在,現地では自生株が減少傾向にあり,有志による保護活動が行われています.海外市場ではまれに組織培養や胞子により繁殖されたものや,株分けにより増殖されたものが流通することがあります.昨年(2002年)は,海外業者による組織培養株を輸入したものが国内でわずかに流通したようです.もし栽培するのであれば,十分な施設を用意し,“アンディヌムを栽培する”といった意識をもって取り組んでもらいたいと思います.今後繁殖が盛んに行われるようになれば大量に出まわるようになる可能性もありますね.たのしみです.
本種はアフリカ産の P.elephantotisや,特に P.quadridichotomumと近い関係にあるのではないかと考えられており,姿の特徴や生育の特徴において共通点が数多く見られます.
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