第51回国民体育大会冬期大会スケート、アイスホッケー競技会最終日は29日、日光市のアーデル霧降りスポーツバレイを主会場に行なわれ、スケートで北海道が男女総合(天皇杯得点)女子総合(皇后杯得点)をともに2年ぶりに制した。男女総合は36度目、女子総合は16度目の優勝。本県勢はアイスホッケーで成年、少年ともに決勝に進んだが惜しくも準優勝。特に少年は、宿敵北海道に2‐3の接戦、成年は東京に2‐8と力負けした。スピードでは成年男子A千メートルで羽右国臣(日大)が、1分15秒87の大会新で前日の5百メートルに続き優勝。少年男子の渡辺賢一(日光高)は千五百メートルで4位、千メートルでも7位に入賞。成年女子Aでは野口宜子(東女体大)が5位、石幡愛(早大)は7位に入った。同B千メートルでは坂井真弓が5位、同C千メートルでも大橋三重子が4位とそれぞれ健闘を見せた。本県はアイスホッケー陣、スピードの羽右らの健闘で男女総合(天皇杯得点)で143点を獲得し7位、女子総合(皇后杯得点)でも35点の14位、地元の声援には十分に答えた。このほかではスピードの橋本聖子(山梨・SHI)が成年女子B千メートルに圧勝し、十年ぶりの国体参加を締めくくった。フィギュアの少年男子は前日本チャンピオンの本田武史(宮城・七北田中)が優勝した。
少年、北海道壁厚く2‐3
【少年】決勝
北海道 0 2 1 |3
栃木 0 2 0 |2
【評】
日光高単独の本県少年チームは、北海道”ドリームチーム”相手に互角の戦いを演じた。
スピード、パスワークとも北海道には負けていなかった。こう着状態が続いた第2ピリオド8分22秒、均衡を破った。LD広内からのパスをRD井上が右サイドから豪快にミドルシュートを放ち、先制のゲット。北海道も10分33秒、13分26秒と立て続けに得点を重ねた。ここであきらめないのが今年の本県チーム。18分17秒、RD佐原が放ったシュートのリバウンドをゴール前につめていた星野がたたき込み、2‐2の同点に追い付いた。
第3ピリオド7分18秒、左サイドからの相手シュートはGK小島の前でバウンドが変わり、無情にもゴール。惜しくも1点差で敗れたものの、本県チームは力の限りを尽くした。
少年3位決定戦
青森 7‐1 埼玉
腰痛も忘れプレー
ベンチにDFのかなめ高橋淳一主将の姿がない。腰痛の治療のため今市の病院から戻ったのは第2ピリオド14分過ぎだった。
インタハイ、国体と連戦の疲れからか、痛めていた腰が悪化。会場に向かう車中では「試合はどうなっているか...」と気が気でなかったという。到着すると1‐2のスコア。「頑張っている。速く氷の上に立ち、みんなを助けたい」とリンクに降り立った。
高校生活最後の試合はあっという間に終ってしまったが、「試合中はいたみを忘れていた。納得いくプレーが出来ました」と満足。卒業後は古河電工入りが決まっており、「速く試合に出場し、日本代表選手になりたい」と新たな目標を揚げていた。
応援持ち味発揮
決勝に燃えたのは選手ばかりではなかった。スタンドに陣取ったアイスホッケー少年チーム応援団150人(日光高IH部父兄会)の熱い声援。森田弘団長は「日本一の応援で元気づけたいんです」と、張り切っていた。
ゲームは手に汗握る大接戦。応援のボルテージは上がりっぱなし。集団でたたくリズミカルなメガホンの音がリンクに響き渡った。「栃木はチームワークが身上。だから応援も同じようにね」と森田団長。
惜しくも敗れはしたが、2‐3の大健闘に「本当に頑張った」と、父母たちも誇らしげだった。決勝では選手、応援ともに組織プレーで持ち味を十分に発揮したようだった。
【成年】決勝
東京 1 4 3 |8
栃木 0 1 1 |2
【評】
栃木は全力で戦った。将来、日本リーグを背負うユニバーシアード代表を並べた東京に対し、大学生4人が加わったとはいえ、主力は一般社会人。この戦力差を考えれば2‐8は健闘といえる。
若さを全面に押し出し、圧倒的なパワーとスピードで攻め立てる強敵に、栃木はじっとガードを固め耐えに耐えた。総シュートは実に19‐61。降りかかるパックのあらしをGK土田を中心に体を張ったディフェンスで懸命にしのいだ。
また、ここ一番のカウンターに活路を見い出し、数少ないチャンスを何とかものにした。0‐3となり「ここまでか」と思われた第2ピリオド7分49秒、RD藤田が相手GKの左肩を抜く豪快なミドルシュートを決め、一時は2点差とした。
第3ピリオド12分から約2分間、3‐5のキルプレー。この大ピンチもゴール前での必死の守り。無失点で乗り切った。16分29秒には相手のカットミスを見逃さず、LD阿部修がパックを奪うと、自ら持ち込み2点目をゲット。大差にも最後までゲームを捨てなかった。
成年3位決定戦
北海道 14‐6 京都
成年5、6位決定戦
青森 5‐1 大阪
成年7、8位決定戦
埼玉 4‐4 香川
PS1‐0
アイスホッケー天皇杯得点
1 栃木 80
1 北海道 80
3 青森 60
4 東京 50
5 埼玉 45
6 京都 35
7 長野 30
8 茨城 25
8 大阪 25
一進一退あと一歩(少年)
焦点
一進一退の攻防ー。本県少年は、王国・北海道の牙城をあと一歩で崩すところまで追い詰めた。
一昨年は2‐15、昨年は3‐12と大敗での準優勝。8年連続の2位となったが、これまでとは格段に違う試合内容に、山本久男監督は「3失点は満足です。選手たちはよくやってくれた」と健闘を称賛した。
得点を重ねられると闘争心も失う。過去の反省から「どれだけ失点を押えるかがカギ」(山本監督)と作戦を立てた。第1ピリオド開始直後の強烈なシュートを佐原弘樹が身をていして飛び込み阻止。選手は計36本のシュートに真っ向からぶつかっていった。
大方は「また、大差をつけられるだろう」と劣勢を予想。しかし選手は闘志でその予想を覆した。第2ピリオド広内慎二からの、絶妙のパスを井上裕之がたたき込み先制すると「対等にできる。いけるぞ」と選手のみならず、会場のムードも最高潮。
同点シュート決めた星野紀明は「逆転されても追い付ける」。守護神・小島孝喜も「勝てる。ゴールを許さない」と自らをかき立て、北海道にプレッシャーをかけていった。
最後は不運なゴールで幕を閉じたものの、高橋淳一主将をはじめ選手らは「思う存分戦い、悔いはありません」と完全燃焼。地元での初優勝はのがしたが、勝ちある準優勝だった。(和田利文)
スポット
悔しさバネに飛躍(成年)
災い転じて福となす。成年アイスホッケーチームが歩んだ1年間の道のりは、まさにこの言葉に象徴されるだろう。地元で堂々の準優勝。寺尾一彦主将は「昨年の初戦敗退という屈辱がなかったら、ここまでこれたかどうか」と、つぶやいた。
大学生主体の新興勢力・京都に敗れた瞬間、本県アイスホッケー界に大きな衝撃が走った。「情けないことになってしまった」(入江淳夫監督)。来年の地元国体を控え、成年チームにはもはや好成績は望めないのか。かつてない深刻な危機感があった。
「だけど、あれで今までのプライドをかなぐり捨てたのが、かえって良かったんでしょうね」と寺尾主将。例年より2カ月も速い、8月上旬からリンク練習を始めた。参加率もかつてとは比較にならないほど高かったという。
もちろん、戦力補強も本格的に行なわれた。咋季まで古河電工に在籍していた3選手、さらに大学生を6人。本県としては最大級のてこ入れだった。関係者は異口同音に「京都のことがなかったらいかに地元開催とはいえあそこまでは」と口をそろえる。
表彰状を手にした選手たちは、一様に誇らしげだった。頑張りは最大限にたたえられよう。だが禍福はあざなえる縄のごとし。国体アイスホッケー競技、特に成年は戦力の平均化で”戦国時代”に突入したと言える。過去の栄光で勝てる時代は終った。「来年は...」。今から考えても鬼は笑わないはずだ。(久保正洋)