プラティケリウム ヒリー
Platycerium hillii T.Moore

 ヒリーはオーストラリア北部に分布するビカクシダです.性質は非常に強く, また繁殖力も旺盛で子株をたくさん出してよく繁殖します. 本種はビフルカツムに非常によく似ており,混同されたり間違った名札をつけられていることがあります. 両種の交配種があることも混乱に拍車をかけているかもしれません. ですが,よーく見てみるといくつか相違点があることに気付きます. まずは貯水葉.ビフルカツムと違いヒリーの貯水葉は縁が切れ込まずに丸い形をしています. 次に胞子葉ですが,葉の先端部分が幅広で葉身がそれほど長くならないのでズングリした形をしています. 全体的にまるっこい印象とでも表現すればよいでしょうか.

 これといった特徴もなくあまり目立たないように見えるかもしれませんが,質実剛健,犬にたとえるなら日本犬のような ビカクシダといえるかもしれません.

2003年8月いただきもの
P. hillii
渋いです
 ヒリーはどこにでもあるようで実はなかなか目にかかれない種類だと思います. もちろん市販されることもほとんどないのでずっと探していたのですが,ついに実物を手にしてとっても幸せ. 某植物園で拾った胞子からの実生苗は,これまた某植物の会にて配布してしまいました.一株ぐらい手元に残せ!という感もありますが また胞子を拾ってくればいいしね.

多くの園芸品種
 ヒリーからは優秀な園芸品種がいくつか生み出されています.なかでも'Delight'と呼ばれる品種はピカイチで, 幅広で大胆なフリルをまとった胞子葉が繁る姿はまさに「優雅」の2文字に尽きます.
栽培のコツ
水やり

春〜秋)ヘゴにミズゴケで付けてある場合は上部のミズゴケではなく下部のミズゴケの状態を見ます. 水が下がるので上の方のミズゴケが乾いても中はぐしょぐしょってこともあるからです.

下部のミズゴケ表面が乾きかけてきたら(上部は乾いている)いたらたっぷりと, 表面だけでなく中まで十分に水が行き渡るように与えます.十分に水分を浸透させないと水不足で次第に葉(株)が 小さくなってしまいます.また,水分が不足すると葉焼けしやすくなったりもします.

真夏の熱帯夜が続くようなときは成長が鈍くなったりとまったりします.このようなときは潅水の回数を少なめにします.

)最低温度が10度Cぐらいあって日がよく当たる環境であれば成長を続けます. ですので完全に水を切ってしまうことはさけ,乾燥気味に管理しながらも潅水はしっかりと行います. それよりも低い温度だと成長は止まるかもしれませんがやはり時々は潅水した方が良いと思います.

施肥

成長している時期には1ヶ月1度ぐらいの頻度で発酵油粕団子のような固形肥料を与えます. 薄めの液肥を回数多く与えるよりも,固形肥料を与えた方が機嫌が良いように思います.

固形肥料を与える場合は茶色の貯水葉の後に詰め込み,潅水のたびに根元に肥料分が溶け出すようにしてあげます. 液肥を与える場合は,3000〜4000倍に薄めたものを潅水代わり,もしくは潅水2,3回のうち1回ぐらいの頻度で与えます. うちでは「固形肥料+潅水2,3回に一度薄めの液肥」です.

日照

日照は30〜50%遮光にしています.朝のうちは直射日光,日中は遮光下となる場所がよいです. 遮光率を低くする場合は風通しをよくして葉焼けしないように注意します.
日陰でも枯れることはありませんが,貯水葉は細く長く伸び,葉の枚数も減ってしまいがちですから, できるだけ明るいところにおいてあげた方が良いです.

置き場所

上記の日照条件に加え,とにかく風通し.空気が動けば日焼けの予防にもなりますし, なんといっても根もとの水分が長時間停滞することがなくなりますから根ぐされの予防にもなります. 病害虫の予防にもなりますね.

冬越し

ヒリーはけっこうな低温にも耐えますが,もともと亜熱帯〜熱帯の出身ですからすこし温度を保ちたいです.

冬でも15度C〜25度Cの室温が確保できるようなら成長を続けるでしょう. むしろ暑い夏よりもこのぐらいの気温の方が活発に成長します. 我が家では,秋から春にかけての時期が主な成長期となっています.夏は暑さのためかほとんど成長が止まってしまいます.

活発に成長を続ける場合は施肥,潅水とも通常通り与えて構いません.日照は直射日光〜半日陰に.

最低室温が5度C以下の場合,潅水を控えめにし休眠させます.葉水をこまめに与えると良いでしょう.

栽培の記録