プラティケリウム コロナリウム

Platycerium coronarium (J.G. Koenig ex Muell.) Desv.

スマトラ,ボルネオ,フィリピン,タイなど東南アジアに広く分布する大型のビカクシダです.
貯水葉の上端は深く切れ込み,やや前方に張り出します.上端の切れ込み先端は丸く, 大型な割には穏やかな印象を受けます.この貯水葉の形を冠(英:crown,ラテン語:corona)に見立てて, コロナリウムという名前がつけられました.
下垂する胞子葉は細かく分岐してよじれながら,ときに2mほどの長さにまで成長します. 貯水葉や胞子葉の表面はつるつるしていて星状毛がないような印象を持ちますが, 実はコロナリウムにも星状毛は存在するのです.ただその量が少なく簡単に取れてしまうために,時間が経つにつれて 葉の表面がつるつるになってしまうというわけなのです.胞子葉にいたっては光沢さえもありますね.
それで,私はその「ピカピカツイスト」姿がどうしてもソバージュというヘアスタイルに見えてしまって, その生々しさのあまりに本種があまり好きではなかったこともあったのですが, よくよく見ているうちに本種の姿はビカクシダの中で最も美しいものだということに気付きました(笑).

派手な大型種としては珍しく,コロナリウムは子株をたくさん出します.P.ridleyiと同じように茎が枝分かれしたり ビフルカツムのように根の先端に芽をつけたりします.特に枝分かれで芽が増えた場合はそれらの芽の高さが だいたい同じになるので,年月の経った株は着生している木の幹(枝)をリング状にぐるりと取り巻く形になります. もちろん胞子によっても増えるので,以前の自生地では,一本の樹に無数のコロナリウムのリングが着いているという 異様な光景を目にすることもできたようです.原住民はそれを「悪魔の巣」とよんで恐れていたのだとか. 現在では株の乱獲によってそのような光景はあまり見られなくなったとのこと.なんともさびしい.

2002年9月24日 YahooAuctions!で
うっかり落札
熱帯アジア産の大型種にだけは手を出さないように気をつけていたのですが, でも育てるならコロナリウムがいいかなぁとか思っていたところ,たまたま知人より 連絡をもらいました.「なんかビカクが出てるよ」と.見てみたらばコロナリウム. 悩んだ末に落札してしまいました!

長くなるんだろうなぁ.
将来的にコロナリウムってば胞子葉の長さが2メートルとかになってしまう可能性があるわけですが, 怖くもあり楽しみでもあり.

変異が多い
胞子葉や胞子パッチの形の変異が多くレポートされています.胞子葉の幅が細いものや広いもの.あまり長く垂れ下がらないもの. 胞子パッチの縁にフリフリが付いているとか,形がハート型をしてる,とかなんとかいろいろ.何年か前に新種として発表された ビカクも,結局は変わりコロナリウムのような気がしたりしなかったり・・・実際に株を見たことがないので分かりません.

アメリカでは栽培難易度は中難易度とされています.ですが,私にはビフルカツムなみに丈夫に思えます.
この「栽培がちょっと難しい」というのはおそらく現地の樹から剥がした大人の株を海外から輸入して育てる場合などでしょう. 輸入の際に,大株は見るも無残な姿に切り刻まれて送られてくることがあるみたいで, それなら確かに復活させるのは難しいでしょうし,その後の性質もあまり丈夫とはいえないものになるかもしれません. 実生から育てたものや,同じ輸入であっても胞子や組織培養による苗を取り寄せた場合には切り刻まれることはないですから, そういったものはとても強いです.
 
 
栽培のコツ
 
やり

春~秋の成長期)ヘゴにミズゴケで付けてある場合は上部のミズゴケではなく下部のミズゴケの状態を見ます.水が下がるので上の方のミズゴケが乾いても中はぐしょぐしょってこともあるからです.

うちでは「ミズゴケはしっかり乾いてるんだけど胞子葉はまだしおれていない」こういう状態になったら水やりしています.表面だけでなく中まで十分に水が行き渡ってミズゴケがしっかり水分を吸収するよう与えます.

ちょっとしおれかけてきてから,もしくはしおれかける直前にたっぷりと水を与えると機嫌がよいように思います(中~大株).緑色の貯水葉に水がしみこんで部分的に黒っぽい色に変わってしまうようだとちょっと水やりの回数が多いかもしれません.もしそうなってもすぐにかれてしまうようなことはありませんが,鑑賞上そうならないほうが成績がよいかと.

)温度を高く保ち成長期と同じ管理をします.最低12度Cまでは無事を確認しています.潅水量を減らせばもう少し低くても大丈夫かもしれません.

温度を高めにして冬でも胞子葉を成長させるようなときは,空中湿度を保つことにも注意するとよいでしょう.コロナリウムらしいながい胞子葉をきれいに育てるためには湿度が欠かせません.低湿度でカッチリしまって育った姿もまたよいものですけれどもね.

 

施肥

肥料はすきですが強いものを大量には与えない方が良いでしょう.成長期には1ヶ月1度ぐらいの頻度で発酵油粕団子のような固形肥料を与えます.薄めの液肥を潅水代わりに与えるのも良い方法です.ですがやはり固形肥料を与えた方が機嫌が良いように思います.

固 形肥料を与える場合は枯れて茶色に変色した貯水葉の後に放り込み,潅水のたびに肥料分が溶け出すようにしてあげます.液肥を与える場合は, 3000~4000倍に薄めたもの潅水代わり,もしくは潅水2,3回のうち1回ぐらいの頻度で与えます.一度に大量に与えるようなことは避けます.

 

日照

基本的に半日陰.木漏れ日のような光が好きです.我が家では朝のうちは直射日光,日中は遮光下となる場所に置いています.遮光率を低くする場合は風通しをよくして葉焼けしないように注意します.

日照が強いと葉の色が黄色っぽくなり,葉の長さもちょっと短めになります.

 

置き場所

大型種は根元の貯水量が多いので水分が長時間停滞しやすく根ぐされしやすいとよく言われます.根ぐされを避けるためにとにかく風通しが良い場所に置くようにします.

 

冬越し

冬でも最低13度C~20度Cの室温が確保できるようなら安心です.むしろ暑い夏よりもこのぐらいの気温の方が活発に成長します.

活発に成長を続ける場合は施肥,潅水とも通常通り与えて構いません.日照は朝だけ直射日光~終日直射日光が理想的.

湿度が低いと胞子葉の幅が狭くなり,葉の長さもすこし詰まります.コロナリウムの本来の美しさを引き出すためには葉水をこまめに行うなど湿度の確保を図ると良いでしょう.

 

手入れ

コロナリウムの特徴はなんといっても優雅な胞子葉の姿にあります.日照・湿度・肥料を気をつけ,さらには移動するときや強い風が吹くような日には葉が痛まないよう注意してあげるとよいと思います.

 

栽培の記録
2004年12月23日
ちょっと大きくなりました.でもまだまだお子様.
隣にある刃物はブラジルに行ったときに買ってきたもの.成田空港の税関で公安呼ばれちゃいました.