ビカクシダの歴史
ビカクシダとその記載論文
投稿者: plattojp 投稿日時: 日, 05/15/2016 - 14:02たとえば「アンゴレンセ」と「エレファントティス」どっち?みたいな、ビカクシダの学名について気になることがあって記載論文を見てみたいと思い、図書館に複写依頼できるのかどうか以前から気になっていました。いかんせん年代が古いものばかりで見つかるのかどうかもわからないし、しかも記載ページ数が書かれていないものもなどはまるごと1冊コピーしないといけないのかなぁと悩んだり。
それで今回、なぜかこれまでやったことがなかったネット検索をしてみたら・・・、なんとけっこう見つかるではないですか!しかもPDFでダウンロードまで出来てしまう!!というわけで、金曜の夜から夜なべして発掘作業をしていました。目の下、はれてます(笑
Platycerium alcicorne Desv.
-- Mém. Soc. Linn. Paris 6(3): 213. 1827
「 Prodrome de la famille des fougères 」
Platycerium alcicorne Gaudich.
-- Voy. Uranie, Bot. 307 et auctt. 1828 [27 Dec 1828]
Platycerium alcicorne (Willem.) Tardieu
-- Notul. Syst. (Paris) 15: 417, t. 1(1-2) (non Desv.). 1959.
Platycerium andinum Baker
-- Ann. Bot. (Oxford) 5. 496. 1891.
「 A Summary of the new Ferns which have been discovered or described since 1874 」
-- Christ, Hedwigia 44. 363. 1905.
Platycerium angolense Welw.; Bak.
-- Syn. Fil. (Hooker & Baker) 425, in adnota 1868.
sym. Platycerium elephantotis Schweinf.
-- Bot. Zeitung (Berlin) 29: 361, fig. 1871.
Platycerium bifurcatum (Cav.) C.Chr.
-- Index Filicum 1857.
Platycerium bifurcatum (Cav.) C.Chr.
-- Index Filic. 496. 1906.
Platycerium bifurcatum subsp. bifurcatum Hennipman & M.C.Roos
-- A monograph of the fern genus Platycerium (Polypodiaceae) 1982.
Osmunda coronaria Konig; Mull.
↓ -- Naturforsch. Halle 21. 107 t. 3. 1785.
Platycerium coronarium (Konig) Desv.
-- Mém. Soc. Linn. Paris 6(3): 213. 1827
「 Prodrome de la famille des fougères 」
Platycerium ellisii Baker
-- J. Linn. Soc., Bot. 15: 421. 1876.
Neuroplatyceros grandis Fée
| ↓ -- Mém. Foug., 2. Hist. Acrostich. 103. 1845
| Platycerium grande (Fée) Kunze
| -- Linnaea 23: 274. 1850.
↓ 参考資料:Kunstformen der Natur
Platycerium grande (Fee) C.Presl
-- Epimeliae Botanicae 1851.
Platycerium hillii T.Moore
-- The Gardener's Chronicle ser. 2, 10 1878.
Platycerium holttumii Joncheere & Hennipman
-- Brit. Fern Gaz. 10: 116, f. 1-3, t. 12. 1970.
Platycerium madagascariense Baker
-- J. Linn. Soc., Bot. 15: 421. 1876.
Platycerium bifurcatum (Cav.) C.Chr. var. quadridichotomum Bonap.
↓ -- Not. Pterid. 4: 84. 1917.
Platycerium quadridichotomum (Bonap.) Tardieu
-- Notul. Syst. (Paris) 15: 420, t. 1(3-5). 1959.
Platycerium ridleyi Christ
-- Ann. Buit. II. Suppl. III. 8 t. 2. 1909.
Acrostichum stemaria P.Beauv.
↓ -- Fl. d'Oware 1. 2 t. 2. 1804.
Platycerium stemaria (Beauv.) Desv.
-- Mém. Soc. Linn. Paris 6(3): 213. 1827
「 Prodrome de la famille des fougères 」
Platycerium superbum Joncheere & Hennipman
-- Brit. Fern Gaz. 10: 114, f. 4, 5. 1970.
Platycerium veitchii C.Chr.
-- Index Filicum 1857
Alcicornium veitchii Underw.
| ↓ -- Bulletin of the Torrey Botanical Club 32 1905.
| Platycerium veitchii (Underw.) C.Chr.
↓ -- Index Filic. 497. 1906
Platycerium bifurcatum (Cav.) C.Chr. subsp. veitchii (Underwood) Hennipman & M.C.Roos
-- Monogr. fern genus Platycerium (Polypodiac.) 91. 1982.
Platycerium wallichii Hook.
-- Gard. Chron. 1858. 765.
Platycerium wandae Racib.
-- Bull. Int. Acad. Sci. Cracovie 1902. 58.
Platycerium willinckii T.Moore
↓ -- Gard. Chron. n.s., 3. 301 f. 56. 1875.
Platycerium bifurcatum (Cav.) C.Chr. subsp. willinckii (T.Moore) Hennipman & M.C.Roos
-- Monogr. fern genus Platycerium (Polypodiac.) 92. 1982.
そのほかの名前:
Platycerium vassei hort.; Rev.
-- Horticole 1910. 530;
Platycerium diversifolium Bonap.
-- Notes Pteridol. 4. 84. 1917.
Platycerium wilhelminae-reginae Alderw.
-- Bull. Dépt. Agric. Indes Néerl. 18: 24, t. 6-7. 1908
以上は、「現在一般的な名前」からに過去に遡っていくかたちで記録を追っています。木に例えるとするなら、「葉から根本に向かっている」ようなイメージです。なので、実は他に知らない枝が存在するかもしれません。具体的には、ステマリアやビーチーのところで「Acrostichum」「Alcicornium」といったヘンな属名が登場しています。これは、ビカクシダが「Platycerium」になる以前の名前だったり、別の名前に変えられたことがある痕跡だったりします。とくにビーチーはすごいなと思ったんですが、まずC.Chrさんが「Platycerium veitchii」と発表したのを、Underwoodさんが「やっぱ Alcicornium veitchiiだべ」ていって、翌年にC.Chrさんが「は?何いってんのそれPlatyceriumだから」と戻したぽいことが名前の変遷から見てとれます。後に Hennipmanさんと M.C.Rootsさんが「bifurcatumのsubsp.ってことでファイナルアンサー」しちゃってます。C.Chrさんはもうご存命ではないでしょうから・・・。もし C.Chrさんがご健在なら、やっぱまた名前を戻したかどうか?けっこう強い心の持ち主だったんかなあ etc... 中身をちゃんと読んだわけではないのであくまでも妄想です。妄想にしてもちょっと”過ぎる”感じですが。でも、なんか、そんな妄想、面白くないですか?
でも、やっぱり気になるので Underwoodさんの書いてることを読んでみました(英語苦手なのでざっくりと)。学名システムの問題点(?)や命名の経緯や優先順位について記されていて、なるほどUnderwoodさんの言い分は正しい、って思えることことが書かれています。Underwoodさんは真面目な胸熱なひとっぽいです。ちょっと誤解してました。・・・この辺、また別の機会にでも。
1800年代初期にはすでに stag-horn fernと呼ばれていたみたいです。日本では明治後期にはすでにコウモリランと呼ばれていました。大正には”ビカクシダ”も使われていたことがわかっていますが、どちらが先に使われはじめたかなどはまだはっきりしていません。いずれにしても長い間使われてきている名前。やっぱり土着の名前というのは、耐久性もあって、愛着も持てて、いいものですね。
はじめは軽い気持ちで学名命名周辺を調べ始めたのですが、とんでもない深みにハマってしまった感じ。
--- 5/20 追記↓
と、いろいろ調べているうちに、学名の歴史や記載論文記述の難しさを思い知り、プロ研究者のビカクシダに関する仕事っぷりを目の当たりにしたりして、知恵熱出てきました。記載論文と標本の対応も???で、もう基本的なところが分かっていなさすぎて、あぁもうグッタリ。
以上、いろいろありますが、象さんは Platycerium angolense じゃなくて Platycerium elephantotis だね。やっと納得できた。
っていうここ一週間を経ての感想です。
ビカク2号はアルシコルネ?(2015夏の自由研究)
投稿者: plattojp 投稿日時: 火, 12/29/2015 - 03:36これが今年最後のアップになりそうです。
年内になんとかしたいなー、と思いつつも権利関係の確認作業に着手しなかったために紹介できなかった大きなネタがあります。今年の夏の自由研究「ビカクシダの日本渡来に迫る」です。実は、昨年末頃から、ビカクの日本渡来に近づこうと古めの資料を探していました。研究とか迫るとか調査とかいってもそんなたいしたことはしていないのですが、ようするに、”ビカクシダ”あるいは”コウモリラン”のキーワードが載っているできるだけ古い資料を探す、ってことです。神保町の古書店に通ったりネットでいろいろ調べたりして、資料コレクションを拡充、今年の6月に国会図書館資料の紹介などしていたのはこの自由研究の一環であったわけです。でも辿れたのは昭和一桁まで。牧野富太郎先生によると「ビカクシダの日本渡来は明治初年1870年代だろうと思われる」とのことだったので、まだまださかのぼれるだろうとせっせこ調査を続けました。
で、そんなこんなでたどり着いたのは横浜開港資料館。渡来モノをさがすならその窓口へ!そりゃそうですね。意外にもわりと近いところにそれはありました。6,7,8月の週末は折を見ては横浜開港資料館に通いましたよ、ええ。
横浜植木株式会社の「明治四十一年度 定價表(CATALOGUE OF THE YOKOHAMA NURSERY CO., LTD.)」。1908年、いまから100年以上も前の輸入植物のカタログ。室内鑑賞植物カタログ35ページにビカクシダさん居ました!当時の価格は70銭。ほほぅ。
1914-15年大正3-4年度カタログにはビカクシダの白黒写真が初めて登場します。ビカクシダ写真入りとしては横浜植木では最初のカタログです。
そして・・・ と、ここで突然の流れぶった切りですが、今回はここまで。掲載許可をもらってカタログのコピー画像を掲載できたらいいな!と思っています。 開港資料館で問い合わせたところ、”この写しをネットに掲載してよいかどうかの判断については横浜植木に直接ご確認ください”、とのことでしたので、ちょっと手間がー。手元にはもうコピーがあるのに、うずうず。
待ってらんないから、という方はぜひ開港資料館に行ってみてください。地下1Fの閲覧室で原本の写しを見ることができます。地上階の展示室は見ないで閲覧室のみの利用なら100円で入館できます。
洋らん、サボテン、その他の観葉植物についても、へー、この時代にこれもう入ってきてだんだーとか、ソブラリア・マクランサの白花が50円!すごー。とか、ネペン8円、ボストンタマシダ2円(負けた)、モンステラ・デリキオサ75銭(負けた)いろいろ面白いです。
で、ビカクシダの日本渡来に関連して注目したいのは、↓のビカクシダ2号なんです。
もしかしたら・・・またしてもここで中断&来年につづく。
そして、ここからは強引に近況報告に切り替え。
昨年3回めの株分けをしたビカクシダ2号です。
2014年8月株分け直前のお姿 → 株分け直後 → 2014-2015冬 → 現在に至る。
じつは昨日までベランダに居ました。今年の冬ははやはり暖かめで、寒さのダメージが少ないです。というか元気に成長を続けています。強い子です。でもまだちょっとお子さまなので、今年も厳冬期は室内で保護。あと2年ぐらいしたらまた通年ベランダに切り替えようかと予定しています。
メインの株の伸び始めた小さな葉。手みたいじゃないですか?サンショウウオの手、みたいな。こうして写真見てるとかわいいもんですねぇ。
今年の春にはすでに子株の芽が出ていたような気がします。その後順調にそだって、やっと最初の胞子葉が出てきました。来シーズンはさらに育つだろうし、新たな子株も増えてきそうで、いっきにボリューム感が増すのではないかと思います。
↓ワリチーの現在の様子。すでに活動を再開しています。でも要注意で、ここで意気込んで水をたっぷりあげはじめたりすると根腐れしてしまいます。貯水葉に貯水された水分をしっかり使いきってから次の水をあげるぐらいのペースがよいと思います。またこのあたらしい葉の動きが激遅なんですよねぇ。そういうこともあって、水はそんなに積極的にはいらないです。水が足りなくて、胞子葉が脱力しはじめて・・・はいそこで水やり、みたいな、そういうペースです、うちでは。
といっても、ワリチーはそんなに長い年月育てたことがないので、正しいのかどうか自信がないです。これまで、1年目元気→2年目貯水葉がしょぼくれ胞子葉は元気→3年目のはじめに枯れる、というのを繰り返してきて、この株は”3度目の正直”を狙っている株なので。あと3年ぐらいうまくいけば確信が持てるんですが。
↓これはちょっと前の写真になりますが、抜け落ちたリドレイの葉です。ビカクもいろいろありますが、落ち葉が綺麗なのはリドレイだけじゃないかと思います。落ち葉が綺麗、というか、捨てるのがもったいないというか。何日かはこうやって飾っておけますよ!
↓これは現在。今年の夏に伸びた胞子葉から胞子がどさどさと。そして臭い(笑)
↓以下、その他。パキポとディッキア。パキポ2号はまだふつうに青々としてます。休眠してくれません。困った。
↓ Dyckia marnier-lapostollei var. estevesii (WBC2006, Bill Baker)
一昨年に黒い焼き菊鉢に植え替えたんですが、菊鉢から染み出たものなのか、塩にヤラれて(表土に出た白いのナメたら辛かった)大変なダメージを被ったことがあって。昨年の春にプラ菊鉢に植え替えてなんとかここまで復帰。ディッキアは塩には強いんでしょうか。冬季の水やりすぎが原因だったかも。以前みたいなふわふわのエステベシーにはやく戻ってもらいたいです。
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