Platycerium holttumii

から降ってくる何かを必死に受け止めようとするかのように、天に向かって両手両腕を大きく広げる貯水葉。よく目を凝らしていつまでも見つめていると、視線を動かした刹那に本当にいま指が動いたのではないかと錯覚すら覚えてしまいます。一方の胞子葉も、地面に落ちているこれまた”何か”を必死に掴みとろうと、うねうねと必死に手を伸ばすようです。葉脈の交わりや葉の表面のなだらかな起伏が爬虫類の皮膚やその下の筋肉を彷彿とさせ、動物感をよりリアルなものにしているのではないでしょうか。←これは毎回言ってるような気がしますが、ホルタミーの大きな魅力の一つですから、どうしてもはずすわけにはいかない! ・・・ああ、それにしても大きくなりましたホルタミー。

ホルタミーだけではなかなかスケール感が伝わらないので、私が座標軸になってみました。まずはY軸の私。Y軸は170cmぐらいで、その胸元に貯水葉の先がきます。近づく葉っぱを撫でてあげたい気分もしますが、星状毛が取れてしまうのでダイレクトな触れ合いは厳禁です。 傍らにそっと寄り添い、互いのオーラを交換することでコミュニケーションを図るのが正しい方法(諸説あり)。

Platycerium holttumii

↓そしてX軸の私。これはなんというか、どう解説したらよいものか。。

室内栽培で日光が1方向から射すため、胞子葉の成長が、どうしても前の方に抱え込むようになってしまいます。葉が大きいので、日照方向の影響が顕著ですね。上方から光が射せば、胞子葉がきれいに展開してうつくしい姿となるはずです。投光器でも設置すれば良いのでしょうけれど、肩身の狭い集合住宅生活ではご近所さんの視線が気になります。レフ板とか使ったらうまくいくでしょうか。今後チャレンジし甲斐のある改善点ではあります。

Platycerium holttumii

今冬の管理ですが、根腐れに気をつけつつも新しい葉の成長を妨げないように十分な潅水にも気をつけました。今年の10月ぐらい、向かって左側の胞子葉が30cmほどの大きさになり、貯水葉も先のほうがまだ伸長中で全体的に活発に葉が成長している時期は、ミズゴケが乾いていることを確認できしだいたっぷりと水やりしていました。だいたい5日〜7日に1回。年末年始あたりの葉が完成に近づき成長がゆっくりとしてきたころは7日〜10日に1回、たっぷりと。

ですが、葉の成長が完了するあたりの水分量を見誤り、芽付近の貯水葉が黒く変色させてしまいました。水分量が多すぎたのでしょう。盛んに葉が伸びているときに水不足になってしまうことを恐れ、ミズゴケが乾いていないにもかかわらず潅水してしまうことが幾度かありました。それでもしばらくはなにも問題がなかったので、ついついイレギュラーであることに慣れてしまっていたのだと思います。そして気づいたときには黒いおひたし様部分が orz

幸い、異変に早めに気づいたこともあって、深刻な状況には至りませんでした。逆に、黒くなったところの色の変化を潅水タイミングの決定に活用しています(笑)。つまり、黒い部分がみずみずしければ水分は十分に足りているから水はあげない。黒い部分がすっかり乾いて明るい茶色になったら水をあげる、という具合で。

これから2ヶ月前後お休み期間に入ると思います。それにともない、潅水の頻度はもう少し減ると思います。で、そうこうしているうちにまた新しい貯水葉が伸び始めるでしょう。今回のこの大きさでもフルサイズではありません。この2まわりりは大きくなってもおかしくはないと思います。来シーズンはどんな育ちっぷりを見せてくれるか、こわいけど楽しみです。

 

 

そろそろ大晦日

先日、リドレイ1号のメンテを行いました。前回の根腐れメンテでヘゴ板につけなおしてから8年と半年が経ち、なんとなくそろそろメンテした方がいいのかな?と思っての作業でした。きっと、球体の中心部に仕込んだミズゴケが劣化して根腐れもしてそうだなぁー、と心配しながら、球体上部の古い貯水葉を1枚また1枚と切りとってみましたが、なんと、中心部近くでは大量の根が張りめぐっていてカチカチの塊のようなものができていました。そしてその塊はヘゴ板にがっちりとくっついていて、とても剥がせなそうな様子。もう根は生きてはいないかもしれないけれど、腐ってはいない状態です。せっかくこんなにしっかりと根が張っているんだから、このまま封印かな・・・(笑)というわけで、けっきょくリドレイの球体をうすくミズゴケで包みこむだけで作業終了とあいなりました。

途中、せっかくの機会だからというわけで、球体側面部分の貯水葉を取り除いてみたところが下の写真です。2013秋〜2014春にかけて成長した貯水葉の表面にはもう根が伸びていました!そして枯れた貯水葉はしっとりと水分を含んでいました。リドレイを持ってみてかなり軽かったので、もう水が切れているのかと思っていましたが、内部がまだこんなにしっとりとしているとは。リドレイの枯れた貯水葉にはまったく貯水能力がない、とこれまでずっと考えていたので、これは意外なことで驚きました。スポンジ構造はほとんどないと思いますが、スポンジ構造だけが保水に役立っているわけではないようです。まさにシールドリーフ。

リドレイの根

仕上がりは↓の通り。ストックしていた遮光率45%の黒ネットがミズゴケの支持にちょうどいい具合です。通気性も確保できるし、水をかければミズゴケが水分を吸ってくれます。床に広げたネットにミズゴケを薄く伸ばしてそこにリドレイをうつ伏せに寝かせ、新しい葉を傷つけないように気をつけてグルっと一気に巻いて。ミズゴケの硬さや見てくれなど、2,3回ぐらい試行錯誤してなんとか納得のいく出来になりました。さいごに有機肥料を茶袋に入れて置いてみました。胞子葉のボリューム感が増したらいいんですけど。

リドレイメンテ終了

今シーズンの貯水葉が伸びはじめています。遮光ネットを覆い尽くして分からなくするほどに大きく展開してもらいたいです。

リドレイメンテ終了

↓おまけ写真。新たに咲いたカトレア。ヒヤシンスの香りがしてかなり気に入っている花。C. Hawaiian Jewel 'Fuji'

C. Hawaiian Jewel 'Fuji'

右側の2輪で咲いている花は C. Hawaiian SnowFlake

Cattleya ’Hawaiian’ series

 

そろそろ師走

湿度保護フレーム内。ビカクシダは、P.wallichiiとP.quadridichotomum、P.ridleyi子株とP.madagascarienseが収納されています。ワリチーとクアドリは低湿度にとても弱い印象です。この2つはフレーム内に置くようにしてからそこそこ調子いい感じです。特に、このワリチーは来春で3回めの成長シーズンを我が家で迎えることになりますが(それがうまくいったとすれば)、3回目の目覚めをいい状態で迎えられるのはこれが初めてです。これまではだいたい、年々ジリ貧になっていって3年目か4年目に落とすというのを繰り返していたので・・・。

マダガスカリエンセは貯水葉が動き始めています。大きく展開してほしいなぁ。 

湿度保護フレーム

カトレアはもっと太陽光が欲しそうな顔色してます。LED照明を投入しているけれども何かが足りない気が。今年はカトレアとビカクシダを一緒のフレームに収納していていますが、ビカクをメインにしている都合上どうしても太陽の強光線を当てたくない。やっぱりカトレアは分けたほうが良いのだろうか。でもスペースの問題もあるし。悩ましいです。

カトレアにとっては厳しい条件ながら、Cattleya Hawaiian Snowflakeがきれいに咲いてくれました。  

Cattleya Hawaiian Snowflake

植え替え後2年目の花になります。昨年よりはすこしゆったりと咲いたかと思います。でもバルブがいまいち小さくて。来年はエロ心を出してちょっと肥培してみようかな。・・・そうすると根を痛めて失敗してしまったりするんですよねぇ。  

先週末に横浜三溪園の菊花展にでかけてきました。菊はとても好きな花です。庭があったら菊もやりたいな〜。 

三渓園菊花展

 

取り込み2016秋

先週末の休日、10月15-16日にとりこみました。以前は”体育の日(10月10日祝日)”に取り込むようにしていたことがありますが、最近は天気予報の1週間予報で最低気温15度C以下となる日が増えてくるようなら取り込むようにしています。今年はなんだかやけに早いかなあ、と思いましたが、暖冬の年(?)に11月上旬に取り込んでいたことがあって、どうもそのときの印象が強く記憶に残っているだけのようです。

(2015)10/17 取り込みはじめ
(2014)10/中 怪しい光の季節
(2013)10月中旬ごろ
(2012)11/上 植物箱2012
(2011)11/07 密着生活
(2010)11/07 ビカクタワー2010
(2009)10/下 できた。。。けど

SDIM6576 - Platycerium ridleyi

SDIM6592

↓水やりするにの外に出したホルタミー。なんだかホルタミーの周辺だけスケール感がおかしい笑 本気出してきたホルタミー、こわいw とかいいつつ、しっかり有機肥料を貯水葉の裏側に投入したりしています(大きくなれよ〜。)背後のワイヤーネットは600X450mmです。おそらく外で水やりするのは今シーズンはこれが最後。これからは室内においたままの水やりです。

SDIM6563 - Platycerium holttumii

↓べっぴんさんのコロナリウム。今年は胞子葉が長くなるかと予想していましたが、結局はそれほど長くはならず。こういう長さの個体なんだろうか? もうちょい長く伸びてくれるとちょうど好みになるんだけれども。
色づいた旧シーズンの胞子葉がとてもきれいです。

SDIM6582 - Platycerium coronarium

まだ外に出しっぱのものも。ホーンズサプライスにカイガラムシ(白くて細長いタイプ)が大量発生していて取り込むのを躊躇していましたが、この後薬剤掛けて取り込みました。このカイガラムシ、カトレアから伝染ったものなんですよねぇ。しかもこのカイガラムシ、しつこいやつ。はぁ、憂鬱。
ビフルカツムはまだ部屋の中の居場所が定まっていないので、もうしばらく外にいてもらおうかなと思っています。シンニンギア・エウモルファは水を減らしていって、断水屋外越冬の予定。ディッキアもこのあと取り込んだし、そうすると残るはハイビスカスと南米着生ツツジ。プルメリアはすでに取り込んでいますが、葉っぱ落として休眠してくれないので悩んでいます。プルの葉が落ちてくれれば場所空くんですけどねぇ・・・。

SDIM6600

↓さぼさぼ。スーパー兜。スーパー兜がここ数年気になっていて、でも難しそうで手を出していなかったんですが、先日大阪のWILDWOODに行った際に山城愛仙園にも立ち寄り、ついに買ってきてしまいました。昨年のリトープスは、二重脱皮がこわくて水を少なめにしたら球が小さくなってしまい、梅雨明け後も午前中の直射光に当てていたら8月中旬ごろに潰れました・・・。リト再挑戦もやっぱり気になったんですが、まだ知らぬ植物をということで今年はこやつに挑戦することに。根を暖めると良いらしいので、鉢の下にパネルヒーターを敷いています。さてどうなりますか・・・。

SDIM6595

 

しわ系ビカクシダ

Platycerium madagascariense 2枚目の貯水葉が完成し、3枚目の貯水葉が動き出しています。次第に溝が深くなってきていますが、まだまだお子様で、六角形のハニカム構造は曖昧です。ハニカム構造といえば個人的によく想い出すのは、パイオニアのHiFi-CDプレーヤーのハニカムシャーシ。ハニカム構造が微細な振動を制振するから高品位な音質を実現する、とか謳っていたカタログ冊子が超懐かしいです。そのCDプレーヤーはたいへんお高いものでしたので、指をくわえてずっとカタログを眺めていることしかできなかったその頃は実は私の思春期だったのですが、揺れる精神とハニカム構造にはせる想いが混ぜこぜになって、今ではすっかりハニカム構造はフェティシズムに等価となっています。なので「マダガスカリエンセはエロい」

さて、ハニカム構造といえばよく「軽い」「丈夫」といわれますが、マダの場合、貯水葉が軽くて丈夫であることにどんなメリットがあるんでしょうか。・・・まったく分かりません。そこでハニカム構造についてちょっとネットで調べてみたら、他にも「断熱性」「表面積」といったキーワードが見つかり、これはなんだか関連しそうだなと気になっています。アリと共生しているという噂もよく聞きますが、アリにとってみれば「断熱性」「表面積」があったら快適な住空間になりそうですよね。ビカクシダにとってみても、根や茎の局所的な環境が安定していて穏やかだったり、酸素やら養分やらを広い表面積でかせぐことができるかもしれないですし。ではその両方をあれこれと考えあわせてみると・・・、やっぱりよく分かりませんが、なにか特殊な生育環境なんだろうな、という雰囲気は伝わってきます。そういったどこかミステリアスな要素が多くの人を惹きつけるんでしょうね、このビカクシダ。

SDIM6140 Platycerium madagascariense

植え込み材のペレポストは乾かしたらダメな素材。うちでは表面が乾きやすいので、毎朝マダの健康チェックを兼ねてペレポスト表面に霧吹きしています。そのほかに3日に一度ぐらいジョウロで全体に水をかけます。ベストの水分量は、しっとりとおしぼり程度がベストらしいのですが、それにくらべるとうちではすこし水分量が多い状態かもしれません。

溝に溜まった水は、カメラ用品のブロワーで吹き飛ばしています。水が溜まったままの部分から腐れ始めてしまいそうに思えて気になってストレスになるし、なんといっても、水垢が残ってしまうとちょっといやなので。

SDIM6139 Platycerium madagascariense

どこから入ってくるのか、毎朝キノコバエを1,2匹発見します。吹き飛ばすなり仕留めるなりして地道に対処しているのですが、なかなか消えません。ほんとしつこい。ワラジーはいまのところ未発見です。ペレポスト植えのシンビにはワラジーが居ないので、もしかしらたワラジーはペレポスト環境があまり好きではないのかな?と思っていますが、どうなんでしょう〜。

以前育てていた株の写真。 3年ほど経って急激に調子崩してきたな〜、と思っていたら貯水葉の後ろにびっしりカイガラムシが付いていて、でも引っ越しして環境が新しくなったりなんだりドタバタしているうちに、メンテセずにいたらダメになってしまいました。という、いい訳です。

蟻ビカクといえば、俺ビをはじめた頃に「リドレイもアリ植物らしい」っていう噂を聞くことがありました。蟻がいないと長い間維持することはできない、ともどこかで誰かから聞いたことがあります。ですがそれはロマンある噂でしかない、とずっと納得せずにいたのですが、2,3年前に昆虫学者による研究を見つけて「あぁ、リドレイはほんとにアリとの共生関係があったんだ」とやっと納得できたのです。ご興味のある方は ↓ にアクセスしてみることをおすすめします。きらめく甲虫で著名な丸山宗利氏のお名前もちらり。
  • A new genus and species of myrmecophilousaphodiine beetle (Coleoptera, Scarabaeidae) inhabiting the myrmecophytic epiphyte Platycerium sp. (Polypodiaceae) in the Bornean rainforest canopy, Munetoshi Maruyama, ZooKeys 34: 49–54 (2010) 
  • Anti-herbivore effects of an ant species, Crematogaster difformis, inhabiting myrmecophytic epiphytes in the canopy of a tropical lowland rainforest in Borneo, Hiroshi O. Tanaka, Yoko Inui, Takao Itioka, Ecol Res (2009) 24: 1393–1397 
  • Ants inhabiting myrmecophytic ferns regulate the distribution of lianas on emergent trees in a Bornean tropical rainforest, Hiroshi O. Tanaka and Takao Itioka, Biology Letters 2011 Oct 23;7(5):706-9. PDF 
  • Within-tree distribution of nest sites and foraging areas of ants on canopy trees in a tropical rainforest in Borneo, Hiroshi O. Tanaka Æ Seiki Yamane, Takao Itioka,  Population Ecology January 2010, Volume 52, Issue 1, pp 147-157

でも、栽培下でならアリが居なくてもリドレイは何の問題もなく育ちますから、どちらかというと弱い共生関係なんだと思います。リドレイの貯水葉はなんなんでしょうね。トンネルは放射状に2分岐しながら伸びているので、マダのように途中でトンネルが交差することもないので蟻にとって特に優しい訳でもなさそうですし(だいたいトンネルに沿って生活するなんていうお行儀のいい蟻はきっといない)。表面積はかせげそうですが・・・。この浮き上がった葉脈の後ろから実は蜜が分泌されている!!とかいうんであればすごく面白いんですけどねぇ〜。エレファントティス、コロナリウム、ホルタミーでは貯水葉に草露が付くことを確認しています。そして草露が甘いことも確認済みです。リドレイの草露はまだ確認したことないんですが、貯水葉の表面ではなく、実は後ろ側に発露していたりして。あとで確認してみよう。

Platycerium ridleyi #2 wide leaf form 朝日にかがやく葉脈。 

SDIM6150 Platycerium ridleyi

2枚目の貯水葉が展開中。

SDIM6152 Platycerium ridleyi

SDIM6147 Platycerium ridleyi

もう一枚(3枚目)貯水葉が出てくれるといいなぁ。

 

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